まずは老人性難聴が疑われるケースを見ていきましょう。本人に自覚がないことが多いので、周囲が気付いてあげることも必要です。老人性難聴は両方の耳に起こり、高い音から聞こえなくなっていきます。また、音自体は聞こえるものの、言葉の輪郭がぼやけるようになります。例えば「サカナ」を「カタナ」と聞き間違えるなど、特に「カ行」「サ行」「ハ行」を含む言葉が認識しづらくなります。早口の人の話や、騒音がある場所での言葉が聞き取れないなども代表的な症状として挙げられます。これらの傾向が強い人は耳鼻科を受診しましょう。
老人性難聴が疑われる人に対する診察では、「純音聴力検査」が行われます。125Hzの低音から8000Hzの高音まで、7つの周波数に分けてどの程度聞き取れるかを確認します。また、言葉の聞き取りがどの程度のレベルかを調べる「語音聴力検査」も実施し、「ア」「カ」「サ」などの語音の聞き取りレベルを測ります。難聴の程度は「正常」「軽度難聴」「中等度難聴」「高度難聴」「聾」5段階に分類されます。老人性難聴は特に高音域の聴力低下が顕著であり、語音の聴き取りが鈍いという特徴があります。
老人性難聴の診断のためには、合併しやすい他の難聴の原因を調べるために耳鏡検査やティンパノメトリを行う場合があります。逆流性食道炎が見られる場合は滲出性中耳炎、施設入居者は耳垢栓塞を伴う可能性があります。滲出性中耳炎や耳垢栓塞は老人性難聴と比べて治療が簡単かつ回復も早いので、早期に診断することが重要となります。
難聴の有無を確認する純音聴力検査は閾値検査と呼ばれるもので、どれだけ小さい音を聞き取れるかを検査します。両方の耳が衰えていくので、一方の耳だけに強い難聴の症状が見られる場合や耳鳴りを伴う場合には、その他の原因について検討する必要があります。老人性難聴の場合は追加で「閾値上聴力検査」を行い、十分に聞こえる程度の大きさをどのように感じるかについて検査します。細かい言葉の聞き取りについては語音聴力検査で測ります。
どの程度の大きさの音を聞くとうるさく感じるかを調べるために実施されるのが「不快閾値検査」です。これは補聴器装用を検討する際に有用な検査です。補聴器装用を行う際は「補聴器適合検査」も行い、補聴器の妥当性を調べます。
聴覚情報処理障害の合併が疑われる場合は「中枢性聴覚検査」を実施します。耳鳴りがひどく、日常生活に支障をきたしている人に対してはピッチマッチやラウドネスバランスなどの「耳鳴検査」を実施します。
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