老人性難聴は加齢に伴い聴力が衰えていくものです。体力が年齢と共に衰えていくのと同様に、加齢によって起こる聴力の低下は誰にでも起こり得ます。聴力の衰えが始まる時期や程度は人によって異なります。
人間の耳の中には蝸牛と呼ばれる部位があり、そこには有毛細胞があります。有毛細胞は音を神経に伝える役割を担っており、これが加齢と共に劣化、減少することで老人性難聴が進行していきます。劣化、減少した有毛細胞は二度と元に戻ることはないため、医学的な治療によって状態を回復することは困難といわれています。
老人性難聴は一般的に高音域から聞こえなくなっていきます。また、左右の聴力は同じレベルで低下していきます。一方で、周波数の低い「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の母音を認識する力は低下しにくいという特徴があります。そのため、本人ではなく周囲が聴力の低下に気付くケースも多いようです。聴力が低下する時期は人によって異なりますが、一般的には40歳頃から低下していきます。
高い周波数の音が聞こえなくなるため、電話のコール音や体温計の電子音などに気付けなくなります。また、全体的にくぐもった不明瞭な音に聞こえるようになっていきます。小さい音が聞こえなくなっていく一方で、大きい音はこれまで以上にうるさく感じるようになります。これはリクルートメント現象と呼ばれるもので、例えば「テレビドラマを見ていてセリフが聞こえないので音量を上げたら、爆発シーンで音が大きすぎて驚いた」「呼びかけても反応がないので耳元で大きい声を出したらうるさいと怒られた」といったことが起こります。
音に含まれる微妙な周波数の違いが不明瞭になるため、音全体がぼやけた印象になり、言葉の違いを認識できなくなります。会話をする際に大きな影響がある症状ですが、これは有毛細胞の損傷によって起こるものであり、多くの高齢者が発症しています。有毛細胞の損傷は20歳頃から徐々に始まっているため自覚症状がないことがほとんどです。有毛細胞が損傷すると音の情報が脳に伝わるまでに欠落してしまうため、耳に入ってきた言葉の内容を認識するのに時間を要します。これは時間分解能の低下と呼ばれる症状で、脳の機能低下が原因でない限り、ほとんどが内耳の機能低下によって起こります。例えば「バラエティ番組を見ていてタレントの早口を聞き取れず、家族と一緒に盛り上がれず孤独感を感じる」といった場面が多くなります。
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